おせち料理が届いた。 婆様が施設に入って


婆様が施設に入ってしまっては、年末も年始も無いだろうと思って、手料理を持って来たよ。そう言って、50年程昔の、教え子が重箱を開いてみせた。昭和40年の始め頃、中学一年生のあまり目立たない女の子で、私は、そのクラス担任であったが、婆様の遠縁でもある。集団列車で大阪に就職し、子供達が独立したので、生まれ故郷に帰って来ているのである。
この日は不思議な日で、昭和3 6 年にこの地に始めて転勤して来た年に担任した中学1 年生だった男の子が、今年から米を作る事が出来なくなったと聞いたから、持って来たよ!、もっと早く来たかったが、忙しくてな!そう言って、トラックからチャック袋を降ろした。米にする暇は無かったから、籾のまま持って来たよ!と 言った。年が明けると70歳になる爺さんになっているのである。その年、学校から2 0 キロほど離れた集落にはバスが通っておらず、山道を歩いて家庭訪問に出かけて、道案内をしてくれた12歳の少年であった。1 0戸程あった訪問先を終えた時は、既に日は海の彼方に沈みかけて居た。先生!今日はもうおそかけん、今日は家に泊まって明日帰れば!?、と言うので、その家に泊まり、翌日に二人で山道をこえながら登校した事を、昨日のように覚えている。
その日、せい一杯の御馳走をしてくれ、翌日の弁当まで作ってくれたその子の母は、80台の後半で、今も健在である。人の心とは不思議なものだと、しみじみ思う年の瀬である。






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