遠い記憶。


梅雨に入ったと言われて、ほぼ2週間雨は降らなかった。この
間、枇杷が良く熟し、カラスと分け合ってたべた。半世紀前、
この時期は、麦こぎの季節であった。千刃こぎ:と言う道具
があった。櫛の大型のような形をしていて、鉄の針のような物が
12〜13本横にならんでいた。麦柄ごと、ひとつかみづつ”ばさっと
打ち込んで、引っぱると、”ばり、ばり;と 音を立てながら、
麦の穂が、 千刃こぎ:の向こう側に落ちる。
石盤に、担任の先生が付けてくれた、赤いチョークの三重丸が
消えないように注意しながら帰る頃、父母やばあ様が、声高
に世間話をしながら、ばり、ばり、と音を立てている。生まれた
ばかりの、ひよこが12〜3羽、親鳥に連れられて、落ちた麦粒
を拾っている。消えかけた三重丸の石盤を取り出してみせて
ばりばり、音が止み、お茶の時間となった。
女の子は草イチゴでポケットを真っ赤にして帰って来た。
遠い昔の記憶である。

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