黄浦江

上海に行って来て写真を見ながら
黄浦江の話をしていた
縁先で 日向をしていた
九十を超えた老人が
話の中に加わって来た

陸軍輸送隊 自動車隊だった彼は
悪臭ただよう川だった
潮が引いたときは
丸太ん棒がごろごろ見える
それが 人の死体だった
殺して捨てる
そして腐る
それを思い出すと
今でも飯が食えなくなる

黄浦江は濁り
潮が満つと何もみえなくなり
においも 少しはおさまる
戦争で いらなくなったものは
何でも捨てる
人も捨てる
そこが黄浦江

見渡す限りの低地で
所々に人家があった
コンクリートの大きな家は
日本の
尋常高等小学校だった

日本兵から見ると
ちゃんころ は
犬 猫みたいなもんだった
兵隊より 将校のほうが
はるかに 
悪い事をしたよ

黄浦江は臭かった
そう言って天井を向き
静かに目を閉じ
六十年前の話だと
つぶやいた

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